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徳井正樹の「小坂山日記」

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2011年 03月 22日

想像する力

あの瞬間から10日が過ぎた。
被災された全てのご家族に哀悼の真を捧げ、、、
と、思いの骨格を固めようとしても、自分自身どれだけ惨状が頭に描けているか?
「現場百回」。先輩の言葉が頭を巡る。
映画監督の山田洋次氏も言っていたが、首都圏にいる私たちが出来ることは、
普段眠っている「想像する力」を今こそ被災地に向け立ち上げて、
頭の芯が痛くなるほど想像することで、自分の次の行動が沸いてくるはずだ。

その中で、被災の数万分の一ではあるが、
新幹線缶詰10時間と一夜の高校避難は、貴重な経験となった。
翌日夕刻帰宅後、初めて被害の全容を知り、様々な思いが脳裏を走る。
「今、自分がすべきことは何か?」の体が振動するほど考えた翌日。
早朝から「これまで25年で手掛けた現場を廻ろう」と
群馬と北埼玉の大半の実作を3日間で約40軒診て廻る。
想像する力_f0133377_16105031.jpg

何年も会っていない設計屋が突然現れ、主要な構造体や瓦をチェック。
「家を検診しました。大丈夫です」と伝えると
『ありがとう、安心しました』の懐かしい声。
ガソリンが底を尽き、残る現場は、給油復旧後廻るつもりだが、
約20年ぶりの建物から先月引渡の現場まで、廻った全ての現場は一軒の被害も無かった。

「当たり前の事が越えられて初めて安心が手に入る」を実感し、かつ
「家は、個人の、家族の、当たり前の居場所」を担う仕事の責任を痛切に感じる。
設計屋一人では何も出来ない。そのために大切な事は、
工務店、現場監督、各専門職方を横に繋ぐ日頃からのネットワークであり、
その根底は立場を越えた人と人の信頼だ。

板ガラス、電柱、電線など、災害復旧に絡む建設資材は、
すでに在庫はおろか、メーカーからは納期すら回答はない。
それでも「我が家竣工の春」を待ちわびる建て主に向け、
まずは現場の設計者として、プロ達の知恵を束ねる要として働きたい。

徳井正樹

by rijim | 2011-03-22 16:12


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